「お昼のTIPS。19世紀以前、料理は過酷な仕事であり、しばしば命の危険が伴った。料理をするには火を使…」エリザのスレッド

3,3378,5502022-07-03 11:41:36

お昼のTIPS。 19世紀以前、料理は過酷な仕事であり、しばしば命の危険が伴った。 料理をするには火を使わないとならないけど、木炭や石炭を使っていた時代は有毒ガスが発生し、しかも温まるのに時間がかかるし火加減の調整も利かなかった。料理人はしばしば厨房で失神して死んだ。

2022-07-03 11:41:36

これを改善したのがガスコンロ。つまみを捻ってガスの出力をいじれば火加減は思いのまま、すぐに望みの火力も出る。 この発明者がアレクシス・ブノワ・ソワイエ。イギリスの料理人で、また、食史に巨大な一歩を記した戦うシェフ。 その生涯は波瀾万丈だった。

2022-07-03 11:44:01

19世紀のフランスに生まれたソワイエは修行を積んだ末、外務省お抱えのシェフとして栄達する。 しかし1830年、ナポレオン没落後、反動政治を布いていたブルボン王朝に対して七月革命が勃発。革命派が外務省にも殴り込んできて、ソワイエは命の危険に晒された。貴族の一味と思われて殺されかねない。

2022-07-03 11:46:47

慌てて帽子とエプロンを脱ぎ捨てたソワイエは群衆の中に混ざり、革命派のフリをしてその場をやり過ごすと、命辛々、イギリスへと亡命する。 当時のイギリスはメシマズ街道をまっしぐらに進み、フランス料理を礼賛、メニューでは意味もなくフランス語で料理名が記されるレベル。

2022-07-03 11:49:03

ソワイエのような優秀なシェフが職を得るのに時間は要さず、たちまち彼はセレブ御用達のシェフとなり、イギリス貴族同士で彼の取り合いとなり、貴族から貴族へとソワイエは条件の良い方へと流れていき、最終的に高級クラブの総料理長になった。

2022-07-03 11:51:35

照明のために使われていたガスをソワイエは厨房に転用する事を思いつき、こうして世界初となるガスコンロが生まれた。当時世界で最も洗練されたインフラを持つロンドンだから出来たことね。 ソワイエの厨房は評判になり、彼はイギリスいちの料理人となった。

2022-07-03 11:53:56

エリート料理人街道まっしぐらのソワイエだけど、転機が訪れる。 1845年、アイルランドで飢饉が発生。 主食であったジャガイモが一斉に疫病に感染し、アイルランド人は飢餓に苦しんだ。イングランドの植民地であるアイルランドでは小麦はイングランドに流され、貧民はジャガイモを食べるしかない。

2022-07-03 11:56:32

欲深いイングランド人の農主達はアイルランド人が飢えても構わず小麦を輸出したので、アイルランドの人口は最終的に半分になった。 この危機にソワイエが派遣されるけど、現地の状況にソワイエは衝撃を受ける。 痩せ細った人達に料理を届けようとしても、そもそも何もない。

2022-07-03 11:58:42

限りある食材の中でソワイエは最善を尽くし、『貧者のスープ』と称される、可能な限り味と栄養に気を払った料理を届けた。それでも焼け石に水で、アイルランド人はばたばたと餓死し、祖国に見切りをつけてアメリカに渡る。 エリート料理人ソワイエの心に火が灯った。

2022-07-03 12:01:07

『美味しい料理を万人に届けるべし』 料理書を執筆し、キッチンの改善に励み、上流でなくても、素材に限りがあっても美味しい料理を届けられるよう、ソワイエは尽力。貧者向けに無料で施してもいたけど、それも手を抜かない。 やがてクリミア戦争が始まると、彼は従軍した。

2022-07-03 12:03:27

現地の状況は酷いもので、兵士達は不衛生な環境で栄養価の乏しいものを食べていた。兵士達は輪番で料理しており、将校達は自分の家から料理人を連れてきている。負傷兵の状況はなおひどく、彼らは弱った身体で犬の餌のようなものを食べて死んでいった。 ソワイエの心が燃える。

2022-07-03 12:05:19

「以後は俺が仕切る! 臨死の兵士にも不味いものは食わせん! 連隊ごとに俺の弟子を配置しろ!」 傷病兵の看護にナイチンゲールが活躍する一方、食はソワイエが統括し、死ぬに任されていた兵士たちに可能な限り栄養と品質に配慮した食事が届けられる。

2022-07-03 12:07:02

エリート街道まっしぐらで、イギリスの食の頂点に達したソワイエはこうして、砲弾降り注ぐ戦場の料理人となり、戦争中、野営のテントの中でも構わず万人のための美食を追求し、限られた食材を如何に美味に調理するかを研究し、発表した。やがてその本はベストセラーとなる。

2022-07-03 12:09:06

48歳の若さで亡くなったソワイエだけど、食の大衆化を推し進めた功績はあまりに大きい。 かつて、美食は権力者やお金持ちの特権で、料理人はその奉仕者だった。 しかしソワイエ以後、どんな階級の人であれ、相応に美味しい料理を食べることができるようになる。

2022-07-03 12:11:27

フランスからイギリスへ、エリート街道から、貧民の料理人、そして野戦陣地のコックへと。 波瀾万丈の人生は、最終的に貧しい者への燃える闘志となって結実した。

2022-07-03 12:13:21

よかったらこれも。 https://t.co/pcKmKlhC7Z

おはよう。今朝のTIPS。 わたし達の生活に欠かせない『レストラン』。実はこの言葉が生まれたのは18世紀末と新しく、しかも施設の名前ではなく、元々は食べ物の名前だった。 革命前のフランスにおいて、都市民の殆どは自宅に調理のための施設を持たず、基本、外食に頼ってた。

2022-07-03 17:47:50

これも読んでって! https://t.co/Xx5ecIh8d0

お昼のTIPS。 偉大なるローストこそがイングランド人の食べ物だった頃 それは我らを気高くし、我らが血を豊かにした 我らが兵士は勇敢で、我らが国土は素晴らしかった おお! いにしえのイングランドのローストビーフ いにしえのイングランドのローストビーフ! https://t.co/3wbxgAt4gR

2022-07-03 17:48:31
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エリザ @elizabeth_munh
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エリザ @elizabeth_munh
2276082021-11-12 20:17:37

歴史語り。華麗なるお話。 ラーメンと並ぶ国民食と言って過言ではないカレー。その発祥は? と問われると、恐らく多くの人がすぐさま日本海軍と答えると思う。 これは諸説あるけど概ね正しくて、全国から寄せ集められた兵士達で構成される海軍で、好き嫌いが生じ難い人気メニューであり、

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さてぼちぼちやれる分はやってしまおうか イギリスのメシマズを語るにはまず大前提として、 ・18世紀半ば、産業革命以前のイギリスは、食文化豊かとは言えないまでも必ずしもメシマズではなかった ・我が国は食に関して極めて恵まれた風土であり、一概に比較するのは間違い というのを抑えておきたい https://t.co/J0Psl5Azau

エリザ @elizabeth_munh
53217732022-11-15 21:34:25

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エリザ @elizabeth_munh
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エリザ @elizabeth_munh
2016002022-05-05 07:18:44

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エリザ @elizabeth_munh
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エリザ @elizabeth_munh
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モード・エレン・ブルースは20世紀をほぼ生きた女性。 労働者階級に生まれた彼女は一般的な家事メイドに最初就き、何事も無ければやがて伴侶を得て、普通のお嫁さんとして一生を送るはずの普通の女性だった。 しかし彼女を取り巻く環境は時代の大波によって激変する。

櫛 海月 @kusikurage
243033312022-03-25 21:04:09

さて、今日のお昼に食べた「天平の宴」ランチが大変大変素晴らしいものだったので、これから晩酌しながら詳細をレポートしていこうと思います。 名前の通り、天平期(奈良時代後期)の宴会料理を専門家の指導の下忠実に再現したもので、なんと40年近く前から行っている試みだそうです。 https://t.co/ZvWFqkTK8h

SOW@新作出すよ @sow_LIBRA11
5319072022-06-14 09:24:58

この「目玉焼きだけで6種類あるアメリカは多様性! それに比べて日本は・・・」論に、「でも日本は卵かけご飯があるぞ?」は痛快な返しだと思うんだw https://t.co/XRt0odlSey

Sanshiro Hosaka @HosakaSanshiro
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(ウクライナ人から送られてきたメッセージ。詠み人・訳者不明。)こんにちは、世界! 今も我々を見つめているのが分かっています。ポーランドの怯えた目で。フランスの気後れした仕草で。ドイツの計画的な歩調で。ラトビアのびくびくした声で。ハンガリーの懐疑的な貧乏揺すりで。イタリア

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みにろま君学校、各生徒が自分の伝統文化に関して朝礼でパワポプレゼンをやったが、各国の子供が自身で興味があること、家で言われていることがなんとなくわかり興味深かったので以下連投、、

The Sun Snores Press @taiyonoibiki
1532522022-06-29 15:26:31

ロシア介入4ヶ月後のウクライナ再評価/スコット・リッター 今年2022年2月24日、ロシアは ❶ウクライナの非ナチス化 ❷ウクライナの非NATO化 という二つの明確な目的を挙げてウクライナに軍事介入しました。 あれから4ヶ月、今、ウクライナはどうなっているのでしょうか?