「私はシンディ・ローパーが大好きで、10代の頃からずっと、大切な人だ。明るくて優しくて、人情があって一…」川上未映子 Mieko Kawakamiのスレッド

2,6291.1万2022-06-22 20:05:10

私はシンディ・ローパーが大好きで、10代の頃からずっと、大切な人だ。明るくて優しくて、人情があって一生懸命で、彼女の音楽にはそんなすべてが現れているようで(音楽には遠くの誰かにもそう思わせる力があるよね) 彼女の音楽がどれだけ私を勇気づけ助けてくれたか、言葉にすることはできない。

2022-06-22 20:05:10

10代と20代、何もかもがうまく行かず、自分がこの先を生きていけるのかどうかわからなかった。苦しいとき、シンディの歌を聴いて、シンディのことを本当によく考えた。大変な家庭で育ったこと、若い頃に自己破産もしたこと、最初のヒットが出るまでずいぶん時間がかかったこと。

2022-06-22 20:05:11

もうあかんかもと思うたびに、でもシンディかって辛かった、でも頑張ったんよなと言い聞かせた。シンディの笑顔と歌は強くて優しくて「がんばりや」「あんじょうしいや」と言ってくれてるようで、シンディがいることでなんとか気持ちを繋いでいられるような、そんな時期があった。

2022-06-22 20:05:12

今から20年近く前、シンディのコンサートがあった。私はその頃ずっと通院していて、ぎりぎりまで出かけられるかわからなかった。でもこの日を心待ちにしていたし、運良く手に入れることができたチケットは2列目で、何より初めてシンディの生の歌声が聴けるのだ。重い体をひきずって会場に出かけた。

2022-06-22 20:05:12

びくびくしながら、でも胸は痛いくらいにどきどきして、果たしてシンディはステージに現れた。輝いていて、光っていて、息が止まりそうだった。たぶん瞳孔もちょっと開いてたと思う。シンディは最初からもう全力で一生懸命で、まだ始まったばっかりの2曲目でもう客席に降りてきた。

2022-06-22 20:05:12

みんなどわっとシンディの方にどよめいて、気がつけば目の前にシンディがいた。そしたらつぎの瞬間──今書いてても体がふわっとするんやけども、シンディがわたしを抱きしめてくれたのだ。このときは完全に瞳孔が開いてたと思う。何が起きたのかわからん瞬間で、そのあとはあんまり記憶がない。

2022-06-22 20:05:13

月日は流れ、紆余曲折を経て私は文章を書いて生活をするようになった。シンディの音楽とあの瞬間は、変わらずずっとそばにあってくれた。そして2020年の春に『夏物語』が英訳されて、届かないのはわかってるけど、自分の作品をシンディに送りたいと思った。でもどこに送ればいいのかもわからない。

2022-06-22 20:05:13

当時はパンデミックでアメリカはエージェントも流通も完全に麻痺していて、どこにも情報はなかった。でも諦められなかった。いろんな方に尋ねて、最後は湯川れい子さんにエージェントの連絡先を教えて頂くことができた。過去に一度ご挨拶を差し上げただけの私に湯川さんはとても親切にして下さった。

2022-06-22 20:05:15

『夏物語』には小さな手紙を同封した。書きたいことは沢山あるのに「悲しいときも嬉しいときも、ずっとあなたの音楽を聴いてきました。私は2曲目でステージを降りてきてくれたあなたに抱きしめてもらったことがあります。大好きです。存在していてくれてありがとう」しか書けんかった。

2022-06-22 20:05:16

シンディが作品を読んでくれるかどうか以前に、そもそもこの状態で配達されるのかもわからない。流通が機能したとして世界中から様々が届くやろう彼女に辿り着く確率は殆どゼロ。でもそれでいいと思った。届かんくても海に小瓶を放つ気持ちで私はシンディに作品を送ったのだ。もうそれだけでよかった。

2022-06-22 20:05:16

『夏物語』は幸運なことに多くの国でベストセラーになって沢山の読者に恵まれることになった。実り多い年やったけど様々を試されるタフな年でもあった。殺害予告を受けた裁判もあったし病気もした。でも若い頃と同じ、シンディを聴くと自分にとって大切なものをいつでも思いだせる気がした。

2022-06-22 20:05:17

それから1年近くがたった2021年の4月のある日、家に荷物が届いた。伝票は文字が滲んでうまく読めないけれど、アメリカから発送されたものみたい。箱を開けるとまずレコードが目に飛び込んできた。シンディの、あのファーストアルバム。マジックでMieko と書いてある。そしてCyndi Lauperの文字も。

2022-06-22 20:05:17

事態がうまく飲み込めなくてぼおっとしてたら、手紙があるのに気がついた。大きな便箋に文字がびっしり4枚、音楽のこと、ご自身のこと、そして『夏物語』について、言葉を尽くして書かれてあった。「ミエコ、この大切な物語を書いてくれてありがとう。私に連絡をとってくれてありがとう」とあった。

2022-06-22 20:05:18

それは、シンディからだった。理解するのに時間がかかって、しばらく動けず、それから色んなことが巻き戻されるように思いだされて、涙がぼたぼた落ちた。それはシンディに届いたこと、そして想像もしなかった奇跡みたいな出来事への驚きと喜びでもあったけど、でも私がそのとき感じていたのは、

2022-06-22 20:05:18

シンディ・ローパーという人はほんまにこういう人なんや、ということやった。誰かもわからん遠くの誰かに、こんなふうに全力で応え、惜しみなく気持ちを伝えてくれて励ましてくれる、そういう人なんやと。そんなシンディ・ローパーのことを思うと涙が止まらずたまらなかった。本当に、なんて人だろう。

2022-06-22 20:05:18

東日本大震災が起きた日、日本に到着したシンディは、帰国せずに、そのままファンのためにコンサートをやり遂げてくれた。終演後にはホールに並んで募金を呼びかけ、翌年には被災地をたずね、多くの人を励ましてくれた。彼女は、ほんまにそういう人なんやと思う。

2022-06-22 20:05:19

わたしは一度目はコンサート会場で、そして二度目は手紙を受け取った日にシンディに抱きしめられたと思った。でもほんまは、10代に初めて彼女の音楽を聴いた日から今までずっと抱きしめられてたんやった。それはこれからもずっと変わらへんと思う。シンディのファンは皆そう感じてるような気がする。

2022-06-22 20:05:19

今日、6月22日はシンディの誕生日。お誕生日おめでとう、そして彼女と彼女の音楽を愛するみなさんにも、心からおめでとうです。早くまた、目の前で彼女の歌を聴ける日が来ますように。その日をみんなで楽しみに(最後まで読んでくれてありがとう)。

2022-06-22 20:05:21
シェア

詩と小説。『ヘヴン』『すべて真夜中の恋人たち』『夏物語』Poet, Author of BREASTS AND EGGS, HEAVEN, ALL the Lovers in the Night.

ツイノートは、Twitterのスレッドをまとめるサービスです。まとめたいスレッドの最後のスレッドに「@twinotes まとめて」と返信するとまとめが作成されます

関連するスレッド

数ヶ月前。終演後「今日車できたけど乗ってく?」とロシア人の同僚が私を誘ってくれた。 他愛のない噂話や演奏会の感想で一通り盛り上がった後「ご両親どうしてる?」と恐る恐る聞く私に彼女は「元気だよ。コロナからの戦争だから何年も会ってないけどトルコ経由で🇦🇹に来てもらうことは可能だから→

「今の40~50代が子供の頃に学校でロシア民謡を聞かされた」という話には、事実も含まれます。50~60年代、社会主義的な労働運動・学生運動と結びついた音楽運動“うたごえ運動”が勃興、その影響下で「カチューシャ」「カリンカ」「トロイカ」などの民謡・愛唱歌が音楽の教科書で取り上げられました。

これはドイツの地方新聞の記事で、なかなか面白いので訳してみます。以下連投。 #銀英伝 #ノイエ銀英伝 https://t.co/ru3Hm76V56

Problem Paradise @propara
90547522022-04-27 11:50:38

思い出話その1。京大の教養部から文学部に替わってきた、まだ右も左もわからない頃に、エレベーターで一緒になった初対面の先生と話をしていて、「先生のご専門は?」とついたずねたら、「エスキモーにエスキモー語を教えています」とのご返事で、えらいところに来てしまったと後悔したものだった。

🐬イルカ🐬 @poet_dolphin
404402022-10-10 00:01:04

心の底から好きになった女性の話 出会いは某マッチングアプリ。 当時の僕は俗に言うヤリモクで、ワンナイトばかり繰り返していた。 マッチしたら固定メッセージで連絡先を交換し、電話で相手の警戒心を解いてアポを組み、即日体を重ねる。 世間的に非常識なルーティーンは、僕にとっての常識だった。

pho @ohp_pho
22710262022-10-18 22:11:17

phoです。全てをお話しします。 この度は突然Twitterをしばらく不在にし、交流頂いている方にはご心配をおかけし申し訳ありませんでした。まずは謝罪させて頂ければと思います。 また、なぜこのような事態となったかを説明しなければならないと思いますので、長くなりますがお読み頂ければ幸いです。

くたまる @chapikof
391612817532022-09-28 20:45:41

当時付き合ってた彼女にどうやってプロポーズするか悩んでた時がある。結婚を前提に同棲してたけど、ちゃんとしたプロポーズはしてなかった。ベタにフレンチのお店で記念日に指輪を渡すくらいしか思いつかなくて、でも指輪のサイズも好みも自信なくて悩んでた。 そんな時に2人で行ったディズニーシー

猫の泉 @nekonoizumi
69512162022-09-23 00:16:20

「能ときくと、ゆっくりした動き、低くうなる声などを想像してしまう。だが、しかし! 足利義満や世阿弥の時代、能のテンポは今の2~3倍速かったという衝撃の研究があるらしい。」 ⇒世阿弥の時代、能は今の2~3倍の速さだった? 遅くなった理由を研究者に聞いてみた https://t.co/pXbJScGZx7

私は常に2番手の人生でした。公立中学では内申点稼ぎのために吹奏楽部に入団。定期テストは420。実テは340。幼少期にちょっとだけ通っていたヤマハのお陰で音楽の試験は78だけど内申点は5を頂き、同じ英単語を100回書く自習ノートを提出して西宮東高校、現役で立命館大学文学部に無事進学。

HAYASHI Tomohiro @SonohennoKuma
227481649382022-07-08 19:19:47

安倍さん、左翼が「原発近海モノの魚」を揶揄嘲笑していた頃から福島の魚介類を食べてくれてたね。 おにぎり頬張ったり、桃食べたり。 旨そうに食べるくせに語彙力なくて、感想は「ジューシー」ばっかりだったけど。 福島の桃の旬は目の前。 今年も、きっとジューシーだよ。 味わって、ほしかったな

りゃんぽうす✨🇺🇦 @akira2202_
33453733142022-03-22 08:04:20

ウクライナ、マリウポリに残った最後の国際メディアであるAP通信の記者が包囲下の街を脱出した際の記事全文訳です。 これで国際的なメディアのジャーナリストは全員マリウポリから去りました。 どんな経緯と手段で脱出に至ったのか、是非ご一読を。 (続↓

麻布競馬場 @63cities
12838597402022-03-26 13:24:49

6年4組のみんな、卒業おめでとう。最後に先生から話をします。イオンとドンキしかない国道沿いのこの街を捨てて東京に出て、早稲田大学教育学部からメーカーに入って、僻地工場勤務で鬱病になって、かつて唾を吐きかけたこの街に逃げるように戻ってきた先生の、あまりに惨めな人生の話をします。

らっち☀ @BlueSky6112
136401047702022-08-02 22:26:03

涙が出る程、嬉しかった事があったので、ここで御礼を言わせて下さい😭 今日20時前、舞浜駅ホーム。 体質的な腹痛で座り込んでしまっていた娘に「大丈夫ですか?」と優しく声を掛けてくれた20歳位の2人組の女の子。 「私も小さい頃はこんな感じで…」と話してくれて泣く娘を見て、涙を流してくれた

たいやき🍢 @ADuNPpTYEIjuUX9
4340420272022-03-23 00:10:07

「私なんで生きてんのかな」って思ってた時期があったのだが、ふと「私が生きてるだけですっごい喜んでくれる人達いるじゃん」と思い立って時間ができると遠方に住む祖父母を訪ねていた時期があった。ただ私の顔を見るだけで物凄く喜んでくれて一緒に茶摘みしたり茶揉みしたり干芋作ったりした

The Sun Snores Press @taiyonoibiki
2413502022-05-19 20:00:24

パトリック・ランカスター/ウクライナ戦争、その最前線から パトリック・ランカスター ダニエル・ダムブリル +アレックス・レポーターフィ Patrick Lancaster - War In Ukraine - Stories From The Front Line Patric Lancaster Daniel Dumbrill Alex Reportfy  (全訳)

@tadanorimetro
26812372022-10-27 22:03:56

日本の大学のゼミの後輩がフランスの帰国子女で「私はフランスの高校で文章の構成のやり方を叩き込まれたんですけど、日本のレポートってそういうのないんですねww何が争点なのかわからない」と言って私の同級生の発表に痛烈なダメージを加えていたが、彼女の言っていたことが今となってはよく分かる。

前に思いついた物語です タイトル「僕と幽霊」 俺の名前は「涼介」これは俺が中学生だった頃のお話、中学生の頃の俺には好きな子がいた、名前は「優」名前の通り優しく、笑顔が綺麗な女の子だ。その頃の俺は、やんちゃばっかしていた ↓続く

🍓めろりー@8m🎀 @melory_Diet
220501064112022-05-26 12:26:39

一時的に鍵外します。 5月26日 10時半頃 福岡の姪浜駅付近で、乳児抱っこして雨宿りしてた私に傘を貸してくれた20代くらいの男性の方。土砂降りの中途方にくれてる時に、本当に助かりました。連絡先を聞けませんでしたが、車は覚えてます。改めてお礼を言いたいです。本当にありがとうございました。

私、今日は寝て起きてずっとウクライナを見続け、考え続けてからまったく関係ない大型バラエティー番組の収録に行ったんです。そうしたら全然使ったことのない脳の部分を全開させ、それでもプロの芸人さんたちに追いつけず、テンパって真っ白になり、楽屋に戻った頃にはウクライナを完全に忘れてた。 https://t.co/QmTxTUnwC9

すっごい詐欺にひっかりそうになって心臓ばくばくしてる!!うわぁ!まじ全わたしが震えた。 ちょっと一旦時間置く。