「人文系の学術評価がどのようになされているのか知らない方が多いので,自分の経験として書きます。論文はい…」スナックかえるちゃん@運転荒い国仕込みのスレッド

1,0482,4992020-10-11 11:47:37

人文系の学術評価がどのようになされているのか知らない方が多いので,自分の経験として書きます。 論文はいきなり発表するのではなく,大学院生だろうと定職ある研究者だろうとまず,どの様に評価がなされるか研究会で複数回発表し,そこで揉まれます。続く

2020-10-11 11:47:37

研究会には分野の研究者が様々参加し,史料の妥当性,海外史料ならば読み解きと解釈,概念の整理や主張について突っ込まれます。発表者は1時間ほど時間をもらい,質疑応答に答えます。答えの妥当性もその場で判断されます。不足ならば研究やり直し。(続く'

2020-10-11 11:49:46

こういう研究会でアドバイスを受けることもありますが,次は学会発表です。学会ではテーマを設けることがありますが,自由研究という部会で発表します。この場合,すでに一度先に発表経験があることなどの条件がついたりします。(続く)

2020-10-11 11:51:08

学会発表では15分ほど時間をもらえますが,すでに一度聞いている参加者もいるので,前回と比較しながら質疑で突っ込みます。このときのプロ全能力や応答(失礼でトンチンカンな質問もある)のさばき方などが研究者としての資質を問われます。つまり研究者としてやっていけるかを見られます。

2020-10-11 11:52:54

学会発表である程度の賛同が得られたら査読誌(ほとんどが査読になってます)に出します。よい発表だった場合は雑誌のほうからお誘いがくる場合もあります。そして書き方にしたがって論文を書いて提出。ここで査読者がチェックします。書き直しを求められることもあります。(続く)

2020-10-11 11:54:39

注目にあたいする発表であった場合,先輩研究者などが科研で研究申請するときに声がかかってチームの一員となることがあります。科研は個人で申請するものとチームで申請するものがあり,学術振興会が研究計画を審査します。一度に通ることはなくて,二度3度度と複数年諦めずに申請します。

2020-10-11 11:56:44

科研の申請チームには必ず若手を入れます。彼らにとっては就職のための認知期間でもあります。一方,科研と関係なく自分個人の研究も進めます。別の査読誌に別の論文を書いて出すなど並行して行います。人文系論文では大体20000字ぐらいが規準です(20ページほど)が,テーマによては続きを執筆。

2020-10-11 11:59:29

任期ありなしにかかわらず,科研以外にも民間の資金のでる研究にも応募します。トヨタ財団などはアジア研究にお金を出してくれるので,研究の出版助成にもなります。人文系ではお金になる特許とかのみかえりはほぼありません。

2020-10-11 12:02:00

若手は非常勤講師とか所属だけを学術振興会など無給で所属しながら研究していることをアピールし,就職先を探します。数年でその分野で採用されることもありますが,近年は大学ポスト数が減っているので,10年待ちになる方も少なくありません。35才を超えるとなかなか難しくなります。

2020-10-11 12:03:59

採用に挑みつつ,継続して研究発表,論文提出,時には留学の機会を得ながら続けます。誰がいつ採用になるかはほとんど運です。私が採用された翌年はもちろんその分野での新規採用はありませんから,待ちになり非常勤講師をしたり,諦めて高校教員などになるかたも多いです。

2020-10-11 12:06:19

中には高校教員としての職を持ちながら,研究者として成果を発表されるかたもいます。途中で大学に採用される場合もあります。全く業績によるものであり,派閥がどうのというのは関係ありません。学会や研究会に出席して自分だけでなく最新の知見を学び続けます。

2020-10-11 12:08:17

一方,発表した論文はそのまま放置ではなく,歴史学では『史学雑誌』という東大文学部の専門誌があり,そこでは毎年「○○年の歴史学の回顧と展望」という論文書評評価があり,あらゆる分野の歴史学の専門家がその年に発表された膨大な論文や書籍を読み,書評します。

2020-10-11 12:11:50

歴史学の学術誌は他にも質の高いものもありますが,まずはほとんどの歴史研究者はこの「回顧と展望」には目を通します。日本史,西洋史,東洋史,中東史,南アジア・東南アジア史など。それぞれが現地言語など使用する史料が違うので,一人でこれをカバーすることは不可能です。

2020-10-11 12:14:30

ここで,注目されるような論文から学会全体の動向がわかります。やかましくいいますが,この時点で人事の派閥利権とかありえません。なぜなら,皆がその論文を読むので,学説に偏りがあればわかってしまうからです。一方異なる学説同士で論争にもなります。

2020-10-11 12:16:52

専門誌での発表以外に,プロジェクトで各大学や研究機関がテーマを設けて3年ほどの期間の研究をすることがあり,そこには代表者がチームに加えたい研究者(ベテランから若手まで)をいれて,旅費支給だけで研究します。その研究は最終年度に論文集や書籍になります。

2020-10-11 12:18:52

歴史研究者はこのような科研での研究や別の科研でチームの一員,プロジェクトでの研究で,同業者から常に成果を見られており,そこで評価されています。論文の被引用数ではなく論文一つ一つの内容評価で,チームに呼ばれます。

2020-10-11 12:21:09

また,学会といっても大抵の研究者は複数の学会に所属しており,それぞれ発表の機会や学術誌があります。原稿料はでないのが普通。得られるものは自分の研究を評価してもらえることとそれがなにがしか学術に貢献できたという誇りですかね。

2020-10-11 12:23:24

学会大会発表は一般参加者にも開かれているので,そこに参加してきた民間の方からお声がかかって,プロジェクトに参加してほしいといわれることがあります。行ってみると某省庁の外郭団体で,クッションを通して政府に研究内容で情報提供を求められることもあります。

2020-10-11 12:25:22

自身の経験ではたまたま自分のやっているところで爆弾テロなどが再燃したので,入国が難しくなり,また現地日本人の安全に影響するのか,というので,内閣府が対策を聞く場が設けられました。第一次安倍政権のときです。なにがしか貢献できるならばと旅費も手当もでませんがお話ししました。

2020-10-11 12:27:33

そういう活動を歴史学に関して言えば,ほぼ一生やっているわけです。もちろん,大学に勤務していると,教育と研究を両立し,大学運営の業務もあります。そして能力のある方は学術会議にほとんどボランティアで毎週一回ほど出張して分科会で討議しています。

2020-10-11 12:29:37

学術会議でどのような提言などがなされているかは,代表となった人が学会の大会などで,状況について話します。学会全体の代表なので,政治的理由で動けるはずがありません。異なる意見をもつ研究者も当然いるので,双方とも「多様性」を認めて話しをします。

2020-10-11 12:32:08

多分,特許とか発見の速度を競う立場の理系の研究分野よりは,人文系の研究は「頓服薬」みたいな効果は見られません。ただし,じっくりその研究成果は効いてきます。論文や書籍自身の「賞味期限」も歴史学では長いです。時代が変わって解釈の変わる史料もでてくるからです。唯一の正解はありません。

2020-10-11 12:34:24

自分の分野でいえば,海外を対象とした研究はそこを植民地にしていた国の言語での研究が最も多く,今英語論文が多いところは「大英帝国」の植民地の広がりによるものです。当然フランスの植民地だったところではフランス語論文が充実します。

2020-10-11 12:36:10

しかし,英語やフランス語などだけで評価できる時代は終わりました。いままで入手できなかったり,留学できなかった地域へ院生や若手研究者が留学とか日本大使館の特別研修生などの身分で1−2年ほど現地にいき,現地語史料や現地語での調査をします。

2020-10-11 12:38:21

日本と異なって,各国では国立文書館が充実して開放されますが,利用者は特別な許可や調査ビザが必要です。取得までに半年の審議期間が必要ですと言われます。そして調査を終えた時には,英語,あるいは現地語で書いた報告書の提出が必須です。

2020-10-11 12:40:16

この報告書はあくまで仮のものなので,あとからちゃんと提出した研究テーマで書かれた論文や書籍をその国の調査局に提出することが義務です。ながく提出されてないと,催促がきまして,それが完了しないと次の調査はできません。放っておくとブラックリストにのります。マジです。

2020-10-11 12:41:53

この正式な報告書は英語・フランス語か現地語のものが必要なので,日本語論文ではだめです。なので英文の論文も書きます。研究が完了していない時に渡航するときは観光ビザしかしょうがないので,国立文書館とかは使用できません。

2020-10-11 12:44:23

また報告書や書籍の内容がその国の政治的禁忌に触れるときは,現地の協力研究者に迷惑がかかるので,表現は慎重になり,書き直しのために出版年が延びることもあります。タブーに触れた研究者は次回から入国禁止になり、その分野全体の研究者の調査取り消しになります。日本だけではなく世界レベルね。

2020-10-11 12:47:10

こうやって入国できなくなった方は日本人だけではなく西欧人など多数います。院生などの若手はそのせいで,自身の研究がすすまず数年待たされたのを知っています。

2020-10-11 12:48:49

こうやって人文系研究は「学術的に正しい」だけではなく,現地の政治や宗教的価値観から拒否される場合もあります。また宗教的価値観がことなる国国の場合は,そもそもその国の研究者が異なる学説に興味を持たない場合もあります。言語的な制約で多言語対応できる研究者は限られています。

2020-10-11 12:51:03

日本においてその分野でのベテランでも,若手だったときに現地に留学できず,植民地宗主国言語だけで研究していたら,のちに留学した若手が現地語史料でバンバン新解釈を書いて発表し,自分は沈黙せざるを得なくなった例も複数知っています。

2020-10-11 12:53:08

特に近年は現地の学者が自分の言語で独自の史料を発見して現地言語で発表していますから,英語論文が評価されるとは限らないのです。アラビア語で書かれた17世紀の資料を18世記半ばにマレー語でイスラーム学者が翻訳した歴史書が手書きで伝えられ,1990年代に公開されたら,それを読まないと。

2020-10-11 12:55:54

手書き文書の場合,AI翻訳では無理ですので,地道に読むしかありません。同時に,漢籍ではその時期のことをどう表現しているか,日本近世史料ではどう記述されてるか,ポルトガル語史料ではどうか,をやらないと研究になりません。

2020-10-11 12:58:09

最終的に今回は英語論文にして提出しましたが,それは現地含む複数の国の研究者が学術的SNSで論文を無償公開していて,それなりに読んでもらえることがわかったので,そこに貢献するためです。多言語史料を扱っているマイナーだが重要と自負している一研究者の呟きでした。(了)

2020-10-11 13:00:57
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化けカエルのスナックのままでございますの,ほほ。バーチャルスナックでお酒とおつまみどうぞぅ。お待ちしてますわん。南洋滞在経験ありでその研究で食うておりますの、ほほ。スナックは気まぐれー 運転免許も某国で取得。総費用2万5千円。そのまま日本の免許に書き換えて無頼運転。

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